「最近よく聞く『クラウドリンク』って、一体どんなサービスなんだろう?」
「自社に導入すべきか知りたいけど、どんな人に合うのか分からない…」
そんな疑問をお持ちではありませんか?
この記事では、話題の「クラウドリンク」について、その正体から具体的なメリット・デメリット、そして最終的にどんな人に合い、どんな人には合わないのかを、プロの目線から徹底的に解説します。
クラウドリンクとは?基本的な仕組みを分かりやすく解説
クラウドリンクの正体は「IDaaS(Identity as a Service)」
まず結論から言うと、「クラウドリンク」という言葉は、特定のサービス名ではなく、ある種のITソリューションを指す一般的な名称、あるいは製品のブランド名として使われることが多いです。
その実体は、多くの場合**「IDaaS(アイダース)」**と呼ばれるクラウドサービスです。
IDaaSとは「Identity as a Service」の略で、直訳すると「サービスとしてのID」。
少し分かりにくいかもしれませんね。
例えるなら、**「インターネット上の関所」**のようなものです。
通常、私たちはGoogle Workspace、Microsoft 365、Salesforce、Chatworkなど、様々なクラウドサービス(SaaS)を利用する際、それぞれにIDとパスワードを入力してログインします。
サービスが増えれば増えるほど、管理するIDとパスワードが増えて大変ですよね。
IDaaSという「関所」を導入すると、ユーザーはまずこの関所で本人確認を済ませます。
一度関所を通過すれば、連携している様々なクラウドサービスへは、再度IDやパスワードを入力することなくスムーズに入れるようになります。
これがIDaaSの基本的な仕組みであり、この仕組みを実現する代表的な機能が後述する「シングルサインオン(SSO)」です。
なぜ今、クラウドリンク(IDaaS)が必要なのか?
近年、IDaaSが注目される背景には、働き方の大きな変化があります。
テレワークの普及やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により、企業が利用するクラウドサービスの数は爆発的に増加しました。
その結果、以下のような課題が深刻化しています。
- 利用者(従業員)の課題:覚えるべきID/パスワードが多すぎて、パスワードの使い回しや簡単なパスワード設定が横行し、セキュリティリスクが増大。
- 管理者(情報システム部門)の課題:従業員の入退社に伴うアカウント発行・削除の作業が煩雑化。誰がどのサービスを使っているか把握しきれない「シャドーIT」も問題に。
IDaaSは、これらの課題を解決し、安全で効率的なクラウド利用環境を実現するための切り札として、多くの企業から導入が進んでいるのです。
クラウドリンクを導入する5つのメリット
IDaaSを導入することで、具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。主要な5つのポイントを見ていきましょう。
メリット1:シングルサインオン(SSO)で業務効率が劇的に向上
**シングルサインオン(Single Sign-On / SSO)**とは、一度の認証で、連携している複数のクラウドサービスへのログインを可能にする仕組みです。
ユーザーは毎朝、IDaaSに一度ログインするだけで、その日使う全ての業務システムにパスワード入力なしでアクセスできます。
これにより、ログインの手間が省け、パスワードを忘れて再設定するといった無駄な時間も削減され、本来の業務に集中できます。
メリット2:強固なセキュリティ(多要素認証など)
IDaaSは、セキュリティを強化するための様々な機能を提供します。
その代表が**多要素認証(Multi-Factor Authentication / MFA)**です。
多要素認証とは、従来のID/パスワード(知識情報)に加えて、スマートフォンへの通知(所持情報)や指紋・顔認証(生体情報)など、複数の要素を組み合わせて本人確認を行う方式です。
万が一パスワードが漏洩しても、他の要素がなければ不正アクセスを防ぐことができ、セキュリティレベルが飛躍的に向上します。
メリット3:ID/パスワード管理の負担を軽減
情報システム部門にとって、従業員のID管理は大きな負担です。
IDaaSを導入すれば、IDの管理をIDaaSに集約できます。
例えば、新入社員が入社した際はIDaaSにアカウントを一つ作成するだけで、業務に必要な複数のサービスアカウントを自動的に作成(**プロビジョニング**と言います)できます。
逆に退職時には、IDaaSのアカウントを無効にするだけで、全てのサービスへのアクセス権を即座に剥奪できるため、情報漏洩リスクを低減し、管理工数を大幅に削減できます。
メリット4:アクセス制御で内部統制を強化
IDaaSは、誰が・いつ・どこから・どのサービスにアクセスしたかというログ(**監査ログ**)を詳細に記録・管理できます。
また、「A部署の社員はSalesforceにしかアクセスできない」「役員は社外からでもアクセスできるが、一般社員は社内ネットワークからのみ」といった、役職や部署、利用場所(IPアドレス)に応じた柔軟なアクセスポリシーを設定できます。
これにより、不正アクセスの監視や内部不正の抑止につながり、企業のコンプライアンスや内部統制の強化に貢献します。
メリット5:シャドーIT対策にも有効
**シャドーIT**とは、情報システム部門の許可なく、従業員が個人で利用するクラウドサービスやデバイスを業務に利用することです。
シャドーITは、情報漏洩やウイルス感染の温床となり、非常に危険です。
IDaaSによるアクセス制御を徹底することで、会社が許可していない野良サービスへのアクセスを禁止し、シャドーITのリスクをコントロールできます。
クラウドリンクの3つのデメリット
多くのメリットがある一方で、もちろんデメリットも存在します。導入を検討する際は、以下の点も必ず考慮してください。
デメリット1:導入・運用コストがかかる
IDaaSはクラウドサービスであるため、利用するユーザー数に応じた月額または年額のライセンス費用が発生します。
初期設定のサポートなどを外部に依頼する場合は、別途導入支援費用がかかることもあります。
単純なコスト削減だけを目的とすると、費用対効果が見合わない可能性があります。
デメリット2:システム障害時の影響範囲が広い
全てのクラウドサービスへの入り口をIDaaSに集約するということは、もしIDaaS自体にシステム障害が発生した場合、連携している全てのサービスにログインできなくなるリスクがあることを意味します。
これは「単一障害点(Single Point of Failure)」と呼ばれ、IDaaSを選定する際には、そのサービスの稼働率や障害時のサポート体制を十分に確認する必要があります。
デメリット3:設定や管理に専門知識が必要な場合がある
基本的な設定は直感的に行えるサービスも多いですが、複雑なアクセス制御ポリシーを設定したり、既存の社内システム(Active Directoryなど)と連携させたりする場合には、ある程度の専門知識が求められます。
情報システム部門に専門の担当者がいない場合、導入や運用でつまずいてしまう可能性も考慮しておくべきでしょう。
【結論】クラウドリンクがおすすめな人・企業の特徴
これまでのメリット・デメリットを踏まえ、クラウドリンク(IDaaS)の導入が特にどんな人・企業におすすめなのかをまとめます。
こんな人・企業にクラウドリンクはピッタリ!
- 利用しているクラウドサービス(SaaS)が5つ以上ある企業
- テレワークを本格的に導入しており、社外からのアクセス管理を強化したい企業
- 従業員数が50名以上で、ID管理の工数を削減したい情報システム部門
- パスワードの使い回しなど、従業員のセキュリティ意識に課題を感じている経営者
- PマークやISMS認証の取得・維持を目指しており、アクセス管理の証跡を残したい企業
- 「ゼロトラストセキュリティ」の実現に向けた第一歩を踏み出したい企業
クラウドリンクがおすすめな人の具体例
【情報システム部門のAさん】 「従業員100名。利用SaaSは15種類。入退社のたびに各SaaSのアカウントを手作業で発行・削除するのが本当に大変。パスワード忘れの問い合わせも毎日数件は来る。この工数を削減して、もっと戦略的な業務に時間を使いたい…」
→ IDaaSのID連携(プロビジョニング)とシングルサインオンで、Aさんの課題は大幅に解決されるでしょう。
逆にクラウドリンクが合わない人・企業の特徴
一方で、以下のような場合には、導入のメリットがコストや手間を上回らない可能性があります。
こんな人・企業は導入を慎重に
- 利用しているクラウドサービスが数個程度で、ID管理に困っていない企業
- 従業員数が非常に少なく、ID管理が手間になっていない個人事業主や小規模事業者
- とにかくコストを最優先し、ITにあまり投資できない状況の企業
- 社内システムが中心で、クラウドサービスの利用がほとんどない企業
クラウドリンクが合わない人の具体例
【スタートアップ企業の経営者Bさん】 「従業員は5名。使っているクラウドサービスはGoogle Workspaceと会計ソフトの2つだけ。ID管理も特に困っていないし、今はとにかく事業を成長させるための投資を優先したい。」
→ この段階では、まだIDaaS導入の緊急性は低いと言えます。将来的に従業員や利用サービスが増えたタイミングで、改めて検討するのが良いでしょう。
主要なクラウドリンク(IDaaS)サービス比較
最後に、代表的なIDaaSサービスをいくつかご紹介します。それぞれに特徴があるので、自社の要件に合うものを選びましょう。
Okta
IDaaS市場のグローバルリーダー。7,000以上の豊富な連携アプリケーションテンプレートが魅力。大規模企業や多くの海外製SaaSを利用する企業におすすめです。
Azure Active Directory (Azure AD)
Microsoftが提供するIDaaS。Microsoft 365を契約していれば、基本機能は追加料金なしで利用可能。Windows環境との親和性が非常に高く、Microsoft製品を中核としている企業に最適です。
CloudGate UNO
国産IDaaSの代表格。日本のビジネス環境に合わせたきめ細やかなアクセス制限機能や、手厚い日本語サポートが特徴。セキュリティ要件が厳しい日系企業に人気です。
トラスト・ログイン byGMO
基本機能や連携アプリ数に一部制限があるものの、無料で始められるプランがあるのが最大の特徴。まずはスモールスタートでIDaaSを試してみたい、という企業におすすめです。
まとめ:自社の状況に合わせて最適なID管理を選ぼう
クラウドリンク、すなわちIDaaSは、現代のクラウド中心の働き方において、セキュリティと利便性を両立させるための強力なソリューションです。
多くのクラウドサービスを利用し、ID管理やセキュリティに課題を感じているのであれば、導入を積極的に検討する価値は十分にあります。
一方で、まだ利用規模が小さく、現状で困っていないのであれば、急いで導入する必要はありません。
この記事を参考に、自社の現状と将来の展望を照らし合わせ、「今の自分たちに本当に必要か?」という視点で、最適なID管理の方法を選択してください。
クラウドリンク どんな人に合うか合わないか